自己破産をすると引っ越しに制限がかかる?

こんにちは、行政書士のKです。

 

今回は、自己破産をすると引っ越しに制限がかかるのかについて解説していきます。


自己破産中は引っ越しに制限がかかる

自己破産すると自由に引っ越しをすることができなくなると言われることがありますが、これは本当でしょうか。
結論から言うと、これは本当ですが正確な表現とは言えません。

はたして、自己破産するとどのような場合に引っ越しについての制限を受けることとなるのでしょうか。

 

 

引っ越しの制限を受けるのは管財事件の場合のみ

最初に知っておかなければならないのは、自己破産した場合にすべての人が引っ越しの制限を受けるわけではないことです。
自己破産の手続きには、管財事件と同時廃止事件の2つの方法があることは最初にご紹介しました。

このうち、引っ越しの制限を受けるのは、管財事件の場合のみです。
したがって、同時廃止事件となった場合は、引っ越しの制限を受けることはないのです。

 

管財事件の場合に引っ越しの制限を受けるのは、自由に移動することを認めると、破産手続きに支障がでるおそれがあるためです。

たとえば、手続きの途中で連絡が取れなくなってしまったり逃亡したりすることは認められません。
また、破産する際に財産を隠して、勝手に処分することも許されません。

遠くに引っ越すことは、このような行為を助長する可能性があるため、制限が加えられているのです。

 

ただ、同時廃止事件となった場合は、裁判所により破産手続きの開始が決定されると同時にその手続きの終了が決定します。
そのため、引っ越しすることに制限を加える必要はないとされているのです。

 

 

制限を受ける期間は決まっている

管財事件となった場合、実際に引っ越しが制限されるのは、いつからなのでしょうか。

これについては、裁判所での手続きによりその期間が明確に決められています。

 

自己破産しようとする人は、裁判所に破産の申立てを行うことでその手続きが開始されます。

ただ、この時点では、破産手続きが本当に開始されるのか、あるいは管財事件になるのか同時廃止事件になるのかはわかりません。

そのため、この時点で引っ越しについての制限を受けることはありません。

 

その後、裁判所により破産手続開始決定が出されます。

同時廃止事件となる場合は、この時一緒に、破産手続きの廃止が決定され、すべての手続きは終了します。

一方、管財事件となる場合は、ここから破産管財人を選任し、財産の調査、財産の換価などの手続きが始まります。

つまり、管財事件となる場合は、破産手続開始決定が出されてから引っ越しについて制限を受けることとなるのです。

 

すべての財産について処理が終わると、裁判所から免責許可決定が出されます。

これにより、債務の返済義務が正式に消滅し、破産手続きは終結します。

引っ越しについての制限も、免責許可決定が出されることで終了します。

一般的に、破産手続開始決定から免責許可決定までの期間は、3か月~6か月と言われます。

つまり、この間は勝手に引っ越しすることができなくなるということになります。

 

また、この制限の内容は、勝手に引っ越しすることが制限されるだけではありません。

居住地を勝手に離れることはできないという内容であるため、引っ越し以外にも制限される場合があります。

たとえば、長期間の出張は、その居住地を長い間離れることになるため、自由にすることはできません。

また、海外旅行の場合も、やはり居住地を離れるため、制限を受けることとなるのです。

 

 

許可を受ければ引っ越し自体は可能

自己破産が管財事件となった場合、破産手続開始決定から免責許可決定までの期間について、勝手に引っ越すことはできません。

しかし、勝手に行うのでなければ、引っ越しをすること自体は可能です。

実際に引っ越しをする前に、破産管財人の同意を得たうえで、裁判所に許可をもらえばそれでいいのです。

裁判所は短時間で許可を出してくれるので、実際に引っ越しをして住民票が変わったら、住所変更の届け出を行います。

 

裁判所に許可を求めた場合、裁判所の許可が得られないケースはほぼありません

また、破産管財人が同意してくれないということもほとんどないため、実際には手続きを始めて数日後には引っ越しができるのです。

特に、転勤のため、家賃が安い家が見つかったなどの理由であれば、それを認めない理由はないのです。

 

なお、出張や海外旅行などの場合も、事前に裁判所の許可をもらう必要があります。

こちらについても、厳しく審査されるわけではなく、申請すれば認められるケースがほとんどです。

 

一方で、事前に裁判所の許可を得ずに引っ越してしまった場合については、2通りの対応が考えられます。

引っ越さざるを得ない理由があって引っ越したのに、うっかり許可をもらうのを忘れていた場合は、すぐに裁判所に報告しましょう。

こうすれば、情状酌量が認められ、大事には至らない可能性があります。

 

しかし、引っ越すことに合理的な理由もなく勝手に引っ越した場合は、この限りではありません。

最悪の場合、免責が許可されないこととなり、借金がそのまま残ってしまう可能性があります。

事前に許可をもらえば何事もなかったというようなケースでも、許可をもらい忘れたために大変なことになる場合があるのです。

 

 

自己破産後は引っ越しの制限がなくなる

管財事件として処理された手続きが完結すると、引っ越しを自由にすることができるようになります。

これは、免責許可決定が出たことで、自由に引っ越しすることを妨げる理由が何もなくなるためです。

 

また、自己破産をした後でも、賃貸借契約を結ぶことはできます。

自己破産した経験があるかどうかは、入居の際の審査には一切関係がないのです。

ただ、破産後に無職となって収入がない場合は、収入が少ないことを理由に契約を断られる可能性はあります。

ただ、これは自己破産したことがあるかどうかとは一切関係がない話なので、勘違いしないようにしましょう。

 

なお、自己破産した人も賃貸借契約を結ぶことに支障はありませんが、別の点で問題が発生する可能性はあります。

それは、クレジットカードを利用することができなくなることです。

家賃の支払いにクレジットカードを利用することが求められる場合がありますが、そのような物件は契約できないのです。

必ず、口座振り込みで対応可能な物件を選択するようにしましょう。

 

また、契約の際に保証人を求められますが、信販系の保証会社を利用するように求められることがあります。

この場合、自己破産した経験があると、その保証会社の審査に通らないということも考えられるため、注意が必要です。

 

今回はここまでとします。それではまた次回

 

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