2回目の自己破産が認められなかったときの対処法

こんにちは、行政書士のKです。

 

前回説明してきたように、2回もの自己破産は簡単に認められるものではありません。
特に、1回目と2回目の自己破産の理由がまったく同じような場合、2回目の免責が認められる可能性は非常に低くなります

 

このような場合には、自己破産以外の方法で債務の整理を行うことも考えておく必要があります。

はたして、どのような対処方法があるのでしょうか。

 

即時抗告を行う

自己破産の手続きによる免責が認められなかった場合、裁判所に異議申し立てをすることができます
この異議申し立てのことを、即時抗告と言います。

 

即時抗告を行うことで、破産手続きが不許可となった事件について、上級裁判所に判断を仰ぐことができます。

地方裁判所で下された破産手続きの不許可については、即時抗告により高等裁判所でその判断をしてもらうこととなるのです。

 

なお、即時抗告が認められるのは、免責不許可決定が出されてから1週間以内とされています。
この期間を経過してしまうと、どのような事情があっても即時抗告は認められないため注意しましょう。

 

任意整理を行う

過去に自己破産したことのある人が、2回目の自己破産を認めてもらうには、高いハードルがあります。

そのため、自己破産ではない債務の整理方法を選択しなければならないこともあるのです。

 

その時に候補となるのが任意整理です。
任意整理とは、借金の借入を行っている金融機関と直接交渉して、借金の返済による負担を軽減するための方法です。

 

任意整理の特徴

任意整理は、金融機関と直接交渉して、将来支払う利息をカットしてもらうものです。
また、過去に過払い金があった場合には、その過払い金を元金に充当して、債務自体を減らすこともできます。

このようにして返済額を減らし、残った返済金額については3~5年程度ですべて返済するという方法なのです。

 

金融機関と個別に交渉することができるため、特定の債務の支払いだけを減額することができます

たとえば、住宅ローンや自動車ローンについては、金利負担が比較的少なく、交渉してもほとんどメリットがありません。

また、これらのローンについて交渉すると、マイホームや車を保有し続けることができなくなる可能性もあります。

 

そのため、住宅ローンや自動車ローンについては交渉も行わないという選択をすることができるのです。

 

任意整理のメリット

任意整理は、裁判所での手続きを一切行わず、すべて金融機関との交渉によって行われます。
そのため、裁判所への書類の提出など、手続きを行ううえでの負担が少なく済みます。

また、任意整理の交渉を行う金融機関を選ぶことができるのも、自己破産などとは大きく異なる点です。
自己破産の場合は、すべての財産を手放すことを前提に考える必要あります。
しかし、任意整理の場合は残したい財産を残すことができるのです。

 

返済額を減らし、そのとおりに返済を続ければ、金融機関からの督促を受けることはなくなります。
安定した生活を送ることができるようになるのが、最大のメリットと言えるかもしれません。

 

任意整理のデメリット

任意整理は裁判所での手続きではありませんが、その記録は信用情報機関に登録されます
そのため、任意整理後しばらくの間は、クレジットカードやローンの利用ができなくなります。

利用できない期間については、最低5年と考えておく必要があります。

 

また、基本的に利息の支払を減らすという方法であるため、すべての場合にメリットがあるわけではありません。
低い金利で借り入れを行っている場合には、利息を減額してもらってもその支払額は大きく減らないという可能性もあるのです。

 

任意整理は、金融機関との交渉により認められるものです。
交渉すれば必ず認められるというものではなく、あくまで交渉によるものであることは覚えておく必要があります。

 

個人再生を行う

過去に自己破産しているために、2回目の自己破産ができない場合、もう1つの選択肢となるのが個人再生です。
個人再生とは、借金を大幅に減額し、残った借金を3年で返済する手続きです。

 

個人再生の特徴

個人再生を行う際は、裁判所に個人再生の申し立てを行う必要があります。
再生計画について裁判所の認可を受けると、債務の額を5分の1~10分の1にすることができます。

残された債務は5年間の分割で返済する必要がありますが、債務の額が大幅に圧縮されているため、月々の返済も楽になります。

 

なお、個人再生については財産を処分する必要はありません。
住宅ローンについて債務の整理が行われると自宅を手放す必要がありますが、住宅ローン特例により、処分する必要はありません。

 

なお、住宅ローンについては減額されませんが、遅延している返済額の一括返済を免れることができます。

 

また、返済期間を延長して毎月の返済額を減らしたり、個人再生後の住宅ローンの返済を猶予してもらったりすることができます。

 

個人再生のメリット

個人再生を行うと、任意整理の場合より、債務の額を大幅に圧縮することができます
その結果、債務の返済を楽に行うことができるようになるのです。

 

また、自己破産とは違い財産を残すことができます。
特に、マイホームや自動車などの財産については、没収されてしまうとその影響が大きくなってしまいます。

個人再生であれば、これらの高額な財産も問題なく残すことができるのです。

 

さらに自己破産をしようとする場合、免責不許可事由に該当すると認められません。
2回目の自己破産が難しいのも、これが大きな理由となっています。
しかし個人再生の場合、借入の原因について問われることはありません
どのような理由の借金であっても、個人再生の手続きを行うことができるのです。

 

個人再生のデメリット

個人再生の場合、任意整理とは違って裁判所での手続きが必要となります。
そのため、弁護士に依頼する際の費用も合わせると、相応の負担が発生するのです。

 

また、住宅ローンについては督促がありますが、自動車ローンについてはそのような決まりがありません。
そのため、自動車ローンが残った状態で個人再生を行うと、自動車は手放す必要があります。

 

任意整理の場合は、特定の債務だけを選んで手続することができますが、個人再生はすべての債務が対象となります。
そのため、時間がかかっても返済したいと思っている債務についても、圧縮されることとなるのです。

 

【参考】自己破産は申請自体は何回でも可能

ここまで、2回目の自己破産について説明してきましたが、そもそも自己破産の回数についての決まりはありません。

 

そのため、裁判所に対して自己破産の申立てを行うことは、何回でも可能なのです。

しかし、自己破産の申立てを行ったとしても、その申立てが認められるかどうかは別問題です。

 

通常、申立ての回数が増えれば増えるほど審査は厳しくなり、認められない可能性が高くなります。

何度も自己破産できると考えるのではなく、2回目はないものとして自己破産する必要があるのです。


自己破産したことのある人が、もう一度自己破産することも、法的には問題ないことがわかりました。

しかし、自己破産できるかどうかは裁判所が判断するのであり、2回目・3回目となるほど、審査が厳しくなるのです。

 

自己破産した人は、再度自己破産することすることにならないよう、お金の管理をより厳しく行うようにしましょう。
また、再び債務の整理を考えざるを得ない状況になった場合は、自己破産以外の方法も検討するようにしましょう

 

f:id:samuraigyou:20210305170907j:plain